芸術歌曲には、洋の東西を問わず生活の中で古くから歌われてきた旋律に基づく曲が多い。学校音楽教育においてそのような曲を学習する際には、芸術的視点からの表現や鑑賞だけでなく、そのもとになった旋律(以下、元歌)との関係で捉える学習も重要であると考える。そこで本研究では、山田耕筰編作曲「中国地方の子守歌」とその元歌を事例として、芸術歌曲の「こもりうた」と生活の中で歌われてきた「こもりうた」の関係について考察した。その結果、旋律に関しては元歌と山田の編作曲では大きな違いは見られないものの、音楽構造上の大きな相違点が、歌に関する音楽表現の工夫(音域、音質、強弱法、リズム操作、音高操作、テンポ操作)とピアノ伴奏の付加の2点で存在することが明らかになった。