Journal of Okayama Medical Association
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歯髄の脂質に関する研究 I ラット切歯歯髄の脂質ならびに脂肪酸組成の解析と放射線全身照射による変動

橋本 郷之助 岡山大学医学部口腔外科学教室
89_851.pdf 1.05 MB
発行日
1977-08-30
抄録
ラット切歯歯髄の脂質組成ならびに脂肪酸組成を解析するとともに,あわせてエックス線全身照射の各々の組成に及ぼす影響を研究し次の如き結果を得た.(1)切歯歯髄の総脂質含量は蛋白量相対比にして0.26の値を得た.エックス線全身照射群(1000R照射後3日目のもの)の歯髄も同様0.26の値を得,その差は得られなかった.(2)正常切歯歯髄の総脂質の脂肪酸組成において,パルミチン酸,オイレン酸,ステアリン酸,アラキドン酸,リノール酸の順に主成分として認められ,前三脂肪酸で78%以上を占めた.エックス線全身照射群においてはオレイン酸の減少,アラキドン酸の増加が認められた.口腔領域への部分照射(1000R)でも同様の傾向がみられた.(3)正常切歯歯髄の脂質構成としてリン脂質,コレステロール,トリグリセリド,コレステロールエステルが主成分として認められ,リン脂質は45 % ,コレステロールは30 % を占めた.エックス線全身照射群ではリン脂質,トリグリセリドの構成比に変動はみられなかったが,コレステロールの減少とコレステロールエステルの増加が認められた.(4)正常切歯歯髄リン脂質の構成を各種呈色反応で仮同定した結果,レシチン,ホスファチジルエタノールアミン,ホスファチジルセリンが主成分として90 % 以上を占めた.特にホスファチジルセリン含量が多いのが注目される.照射群ではレシチンの増加,ホスファチジルセリンの減少など若干の組成比に変動がみられたが,対照との差は有意とは言えなかった.
ISSN
0030-1558
NCID
AN00032489