本研究は,インドの国家教育政策2020および国家カリキュラム・フレームワーク2023に基づいて作成された NCERT 発行の学校教科書(第3~8 学年)を対象に,理科的内容を扱う教科の気候変動に関する内容の取り扱いの現状を分析した。分析では UNESCO による SDGs のための教育と Kagawa & Selby の「理解・緩和・適応」の考え方をもとに観点を設け,記述を抽出・分類した。その結果,初等教育段階の「The World Around Us」では生活世界に根ざした環境配慮の態度と行動の基礎形成が重視され,前期中等教育段階の「Science」では科学的な因果関係や気候変動対策の国際的枠組みが導入されており段階的深化が確認された。一方で,概念導入の遅れ,因果連鎖の不統一,行動変容に至る仕組みの弱さ,学際性の不足や語彙や概念の習得のスパイラルな学習の不足が明らかになった。現行教科書は,体系的かつ実効的な気候変動教育には未だ不十分であり,今後の改善が求められることを指摘した。