本論文は,美術科の教員が新しい価値の生成を目指した授業研究やカリキュラム構築を行うための基礎研究にあたるものであり,その目的は,教員も新しい価値を求めて学び続ける力を培うために「市井no姿勢ni学ぶ」プロジェクト(以下,市井プロジェクトと表記)の有用性を確認することである。市井プロジェクトとは,①教員が日常生活で出会った他者と会い,②他者が学んできたことについてインタビューし,③②を生かした授業を実施し,④②で話を聞かせていただいた他者と③の授業検討を行うというものである。本論文では,①と②の成果と課題をまとめた。成果は,②インタビューを通して教員自身の学びが変容する姿を確認し,インタビュー相手であるK氏自身にも変容が見られたことである。その一方で,課題は,K氏とインタビューの質問者との関係性による検討が行えていない点である。