1.巨大アフリカマイマイ(Achatina fulica Férussac)食道下神経節中に2個の自発発火を有する巨大神経細胞(TAN;tonically autoactive neuroneおよびPON;periodically oscillating neurone)を同定して,その興奮性に対するL-Phe, L-Tyr, L-Trpなどを含んだoligopeptideの作用を検定した.2, TANに対して, 3つのoligopeptideが顕著な抑制作用を呈した.その臨界濃度は, L-Lys-L-Phe-L-Tyrは3×10(-6)~10(-5)kg/l, L-Phe-L-Tyrは3×10(-6)~10(-5)kg/l, L-Phe-L-Trpは10(-5~)3×10(-5)kg/lであった.3.これら3つの抑制性oligopeptideの作用は, TAN神経膜に対する直接の過分極作用であり,そのイオン機構はCl-非依存性であると考えられた.またこれらのoligopeptideは,スパイクの発生およびそのリズム(膜の脱分極時)には影響しなかった.4.そのほかTANに対して, L-Trp-L-Trp, L-Trp-L-Tyr, L-Phe-L-Phe, L-Phe-L-Phe-L-Phe, L-Tyr-L-Tyr, L-Tyr-L-Tyr-L-Tyrが,高濃度(2×10(-4)kg/l)で弱い抑制作用を示した.5.上記物質以外に, L-Phe, L-Tyr, L-Trp, L-His, L-Metなどを含んだ多数のoligopeptideを検定したが,いずれもTANに作用を持たなかった.6. PONに対して, TANと同じ3つのoligopeptideが抑制作用を示した.この臨界濃度はTANの場合より濃く, L-Lys-L-Phe-L-Tyrは5×10(-5)~10(-4)kg/l, L-Phe-L-Tyrは10(-4)~2×10(-4)kg/l, L-Phe-L-Trpは2×10(-4)kg/lであった.この3物質以外では,検定されたoligopeptideはすべて, PONに作用を持たなかった.