本稿の目的は,高校における通級による指導の導入期に着目し,校内体制の整備過程に生じた検討課題を明らかにするとともに,それに対する通級担当者による説明の特徴を捉えることであった。第一に,主な検討課題として「導入の是非」「従来の校内組織との関係」「既存の放課後の取組との関係」「従来の単位認定との関係」「障害という要配慮個人情報の取扱い」「通級による指導を生徒が希望していない場合の対応」が生じていた。第二に,通級担当者は,事例校の実情を参考に質問の背景を推測した上で説明を行うという特徴があった。結論として,校内体制の整備を円滑に進めるためには,通級による指導の導入が現在の各高校の取組等にいかなる影響があるのかを明らかにすること,自校にとって望ましい校内体制を模索するために学校の状況を共通理解することの重要性が示唆された。