東方アジアの地域共生について模索するとき、その体系や方法も見出せず、当然定説も今なお存在していない現状である。共生に当たって、目前に山積する現実課題の解決や諸制度の共通化がこのたびの研究意欲の源泉である。
東方アジアは、経済発展の度合い、政治形態、宗教、言語等が多様で一体感を生みにくいとされてきた。 しかし、EU(欧州連合)やNAFTA(北米自由貿易協定)ほど制度(institutionalization)のレベルは高くないものの、現在はAPEC(アジア太平洋経済協力会議)やARF(ASEAN地域フォーラム)に見られるように、信頼醸成の促進につながるような前向きな地域共生的傾向がでてきている。
本稿においては、近年著しく高成長を遂げてきた経済群、および成長途上にある東アジア地域の経済群、すなわち日本、韓国、台湾、シンガポール群とフィリピン、タイ、マレーシア、インドネシア群、それに中国を加えた9カ国におよぶ地域を対象として論じてみたい。