Okayama Economic Review
Published by the Economic Association of Okayama University

Online ISSN 2433-4146
Print ISSN 0386-3069

ベトナム経済の労働投入と生産性の半世紀

野村 浩二 慶應義塾大学産業研究所
発行日
2023-03-20
抄録
 本稿は,1970-2020年のベトナム経済における品質調整済み労働投入量(quality-adjusted labor input: QALI)の測定により,半世紀にわたる生産性の変化を分析することを目的としている。ベトナム経済の生産性統計の構築における最大の障壁は,同国SNA統計(VSNA)では雇用者報酬が推計されていないことである。本稿は,断片的な資料に基づきながらも,性,学歴,年齢,就業形態別のクロス分類によって定義された労働時間と賃金率の時系列データを構築し,QALIとともにミクロ的な基盤を持つ雇用者報酬と労働分配率の測定へと接近する。また2022年8月には2008 SNAに基づくVSNAが公表され,GDPは大幅な上方改定となった。新しい基準のVSNAに基づき1970年まで遡及した本稿での測定結果によれば,労働投入における質的改善のスピードは1970-2000年の年率0.6%から,2000-20年には(おもに学歴改善を通じて)年率2.0%へと加速し,それは同期間のQALI拡大の65%を牽引し,また労働生産性改善の14%を説明する要因となったと評価される。そしてベトナム経済で全要素生産性が改善を始めた時期は,旧基準に基づく分析結果よりも遅く,2010年代後半に顕著となったことが見出される。
キーワード
労働品質 (Labor quality)
労働分配率 (Labor share)
全要素生産性 (Total Factor Productivity)
備考
論説 (Articles)
JEL分類(JEL Classification): C82; D24; E24; J21; N35
ISSN
2433-4146
NCID
AN00032897
JaLCDOI