脳神経外科的疾患に随伴する脳浮腫の予防および治療を目的として, glucocorticoid剤が,臨床上広く用いられている.しかし,現在のところ, glucocorticoid剤の脳浮腫抑制効果発現の作用機序については,いまだ明確な結論がえられず,ただ単に臨床経験的に使用されているにすぎないのが現状である.近年ようやくglucocorticoid剤の大量投与時に,血液中,髄液中の濃度を測定し,その使用方法,投与量についての再検討がなされつつある(1),2)).しかし,その抗脳浮腫作用の面に注目して,実際に,脳組織中濃度変化に関して検討を加えた報告は,未だ数少ない(3),4)).そこで,実験動物に,凍結損傷法による脳浮腫を作成し,臨床上よく用いられるglucocorticoid剤であるdexamethasoneの(3)H標識化合物をとりあげ,浮腫脳組織中におけるその経時的濃度変化と分布について検索を行ない,本剤の最適な投与方法,投与量を決定するとともに,その抗脳浮腫作用の作用機序の一端を明らかにせんと試みたので若干の文献的考察を加え報告する.