11例の健常例,18例の慢性膵炎例,6例の急性膵炎例および5例の膵癌例においてPS試験の際得られた十二指腸液中のcyclic AMPを測定した.cyclic AMPは健常群においてはsecretinによる膵bicarbonate分泌の細胞内mediatorとして働いていると考えられるが,膵疾患時にはcyclic AMP-bicarbonate分泌機構が円滑に働かないと考えられ,量的にもcyclic AMP outputは低下していた.すべての群においてcyclic AMP outputはbicarbonateおよびamylase outputの上昇と同様にpancreozyminおよびsecretin刺激後にピークに達した.cyclic AMP outputは健常群に比し,膵疾患群では有意に低下した.一方,pancreozyminによるamylase分泌にはcyclic AMPは関与していないと考えられた.十二指腸液中のcyclic AMPはPS試験のparameterとして応用できる可能性があると考えられた.しかしながら十二指腸液中のcyclic AMPの起源は膵のみでなく,膵,胆道系および十二指腸分泌の総合的な表現の可能性も考えられた.