本研究では,自閉症スペクトラム障害のある生徒に対して,ストレッチ時の姿勢改善のためにビデオセルフモデリング(VSM)による指導を実施し,その効果を検証した。実験デザインとしては,ストレッチを構成する4つの姿勢(「伸展」「前屈」「捻転」「側屈」)間の多層ベースラインデザインを用いた。さらに,「伸展」については反転デザインを合わせて用いた。その結果,「伸展」と「前屈」で,VSM 導入直後の行動変容が確認された。また,「伸展」では,VSM の導入と除去,再導入のいずれにおいても行動変容が確認された。「捻転」については,VSM のみでは行動変容が確認されず,リハーサルと視覚的明示を追加する中で初めて行動変容が確認された。「側屈」では,それらの方略を加えても行動に変容が見られなかった。標的行動間でVSMの効果に差が認められたことについて,日常生活におけるこれら4種類の体操姿勢の使用頻度の違いの視点で考察された。