この研究は去勢牛の牛体,枝肉形質と血漿のホルモン,脂質,ミネラルなどの濃度との間の相関を研究するために行った. 肥育を終った黒毛和種去勢牛30頭をこの研究に用いた. と殺時に採った血液にヘパリンを加え遠沈して血漿を採取した. 血漿の7種のホルモン(T3,T4,TSH,Insu,Cort,GH,LH),6種の脂質(TG,LPO,HDL,LDL,TCh,ECh),NEFA,TP,Ca,Mg,IPの濃度を測定した. 牛体の大きさ,枝肉成績値と上述の各成分の濃度間の相関を検討した. TSH濃度とT3濃度の間には有意な正の相関があったが,TSHとT4の間には有意な相関はなかった. 従って,T3が本来の甲状腺ホルモンのように思われる. 血漿T4濃度は骨の長軸発育と関係ある項目すなわち体高,胸囲,胸深,尻長,と前体重,日齢体重(有意近似値),枝肉重量,枝肉歩留と有意な正の相関があった. 血漿T3は肉量増加に関係ある項目すなわちと前体重(有意近似値),日齢体重,肥育度指数,枝肉重量と有意な負相関が高脂肪交雑牛群においてのみみられた. 甲状腺のこの2つのホルモンは化学構造においてのみならず,生理的機能においても異っているように思われる. T3は主として軟組織に,T4は主として硬組織に作用することが示唆される. T3とロース芯の脂肪交雑の間には有意な相関はみられなかった. 脂肪交雑とT4またはGHの濃度の間には有意な負相関があった. 脂肪交雑とTChまたはHDLの相関は有意な正相関があり,脂肪交雑と血漿Mg濃度の相関は有意な負の相関があった. 後者の理につき論義した. 脂肪交雑と日齢体重の間には負の相関があった. 体高の高い牛では脂肪交雑が入り難いことを示すところの傾向がみられる。