稲の収穫作業は脱穀機を定置して,そこへ稲束を運んで作業を行なうのが普通である.したがって収穫作業の機械化は,そのような作業方式を予想して進められて来た.筆者は本実験において,脱穀機に車輪をつけて移動式とし,脱穀機を移動しながら無結束のまま圃場で日乾したのち手近の稲を人手をもってかき集めて,直ちに脱穀機にかけるという方法を試みた.本法においては脱穀そのものに要する時間は多少増加するが,結束の手間が省け,稲束運搬の労力が軽減されるので,収穫作業に要する時間はいちじるしく短縮されることが判明した.本法は秋季温暖,多照,降雨の少ない瀬戸内地方の乾田に適用して,また,直播栽培,機械刈と組合せて,収穫作業簡素化に有効な方法であり,稲の収穫作業能率化の一方向を示すものと考える。