本稿では、文化変容のメカニズムを仮説的にとらえるという目的に鑑みて、とくに後者に注目し、以下のふたつの事例を考察する。ひとつめの事例は、タイの首都バンコクにおいて、1970年頃から欧米のNGO支部などの指導により組織されはじめた地域住民組織の展開のあり方である。ふたつめの事例は、近年タイ国で職業開発施策として展開されている、日本にならった「一村一品」運動とその担い手である「主婦」グループのあり方である。両者とも地域社会開発政策の一環とし位置づけられるものである。とくに急激な人口流入により都市化にともなう問題をたえずかかえているバンコク都を対象とすることによって、これらふたつのプロジェクトの意味がより明確に示されるであろう。そして二つの事例から引き出される政策の機能的意義を明らかにすることによって、地域社会レベルにおける文化変容のメカニズムを仮説的にとらえることを試みたい。