本稿では,まず経済波及効果の考え方について,産業連関表を用いたシミュレーションの結果が,しばしば過大評価になっていることを述べる。その理由として,経済波及効果をもたらす前提条件の考え方にしばしば誤解があることを指摘する。域内の居住者の消費はマネーの移転であり,真の経済効果ではない。波及効果とは,本来,所得が増えた結果の追加消費であって,所得が増えない状況では,代替消費や消費の先取りに過ぎないのである。また,一般にいう経済効果とは,売上高の積み上げであって同じマネーが何でも加算されているものであり,付加価値効果すなわち所得効果とは異なる。付加価値効果は,当初の域外から入ってきたマネー以上にはならない。こういった解釈の誤謬をもたらしているのは,大学での産業連関分析の教育が十分でないことも原因の1つであるが,シンクタンクや公的機関などで提供されている波及効果の計算ツールにも問題がある。そこで本稿では,これまで筆者が提唱してきた波及効果プロセスを見える化するモデルを更に精緻化し,イベントなど外生的インパクトが発生した後の事後的な産業連関表を構築する流れに関して実例を用いて説明を行う。特に自給率の変化の効果については,これまでの競争移入型連関表では効果が過大傾向になる問題点を解消するべく,「部分非競争移入型」の投入構造を提案し,新たな分析方法を提案する。