心不全患者において血中の過酸化脂質の上昇などが報告され,活性酸素による酸化ストレスの関与が示唆されている.そこで,心筋が実際に活性酸素を発生するかどうかを,活性酸素を検出する蛍光プローブを用いてラットの培養心筋細胞において検討した.心不全増悪因子であるアンジオテンシンIIおよびtumor necrosis factor(TNF)-alphaを加えると心筋細胞で濃度依存性に活性酸素が発生した.さらにヒトの不全心筋においても実際に酸化ストレスの発生が増強しているかを検討した.過酸化脂質の代謝産物で,有害なアルデヒドである4-Hydroxy-2-nonenal(HNE)によって修飾された蛋白質を免疫染色にて調べたところ,拡張型心筋症患者の心筋において正常心機能者に比べ5倍以上増加していた.さらにβ遮断薬(Carvedilol)により治療を行ったところ心機能の改善とともに,HNE修飾蛋白質が40%低下した.以上の一連の研究により,
活性酸素による酸化ストレスの発生が不全心筋において増強しており,その抑制が心不全治療のターゲットの一つになりうることを明らかにした.