Annual report / Institute of Plant Science and Resources, Okayama University


Published by Institute of Plant Science and Resources, Okayama University

ISSN 2186-4918

Establishment of a Seedling Test for Resistance to Net Blotch in Barley and a Search for Resistant Varieties

Takeda, Kazuyoshi
Published Date
1992
Abstract
大麦網斑病は糸状菌の1種であるPyrenophora teres Drechs.の感染によって葉身、葉鞘等に網目状の病斑を生じ、子実の登熟低下によって減収する共に、ビールオオムギにおいては醸造品質であるエキス分が低下する重要病害である。本病害は世界各地のオオムギ栽培地帯のうち主として温暖・湿潤な地域に分布しており(Shipton et al.1973)、近年、連作や灌漑によって被害が増大しつつある(Mathre 1982)。我国においては従来からその存在が確認されていたものの、登熟後期の活性の衰えた葉に生じる病害として重要性は認識されていなかった。しかし、最近、北海道、鳥取県、鹿児島県などのビールオオムギ栽培地帯で局所的な激発事例が確認されている。(佐藤、未発表)。本病害に対する防除法としては種子消毒ならびに殺菌剤の茎葉撒布が有効であるが、その効果は完全ではない。また、茎葉撒布はコストが高く、環境汚染の問題もあるので、最も有効で経済的かつ安全な防除法は抵抗性品種を栽培することと言っても良い。従来、本病害の積極的な抵抗性育種は行われていなかったが、最近は抵抗性を有する品種も育成されている(Metcalfe 1987)。抵抗性品種を育成するためには、遺伝資源ならびに雑種後代を効率よく評価、選抜するための検定方法を確立しなければならない。本病抵抗性の検定方法としては幼苗検定法、圃場検定法が考案されて広く用いられているが(Buchannon and McDonald 1965, Holtmeyer and Webster 1981)、環境条件の変化によって抵抗性が変動する事例が報告されているので(Khan and Boyd 1970, Tekauz 1986)、抵抗性を確実に評価するための安定した検定条件を設定する必要がある。抵抗性に関する遺伝資源についてはSchaller and Wiebe (1952)、Dessouki et al.(1965)およびBuchannon and McDonald (1965)等がそれぞれ数千品種を評価し、中国東北部、トルコおよびエチオピアなどに抵抗性の遺伝資源が豊富であること報告している。それらの品種のいくつかについては、抵抗性の遺伝子分析が行われており(Bockelman et al. 1977, Davis et al. 1990)、本病抵抗性育種の交配親として使用されている(Tekazu and Buchannon 1977, Moseman and Smith 1985)。岡山大学資源生物科学研究所大麦系統保存施設は世界的にも貴重なと東アジアの遺伝資源をはじめ五千余の保存品種を有するが、著者らは大麦網斑病の幼苗検定法を確立し、これらの品種の抵抗性を評価したので報告する。
ISSN
0916-930X
NCID
AN10381600
NAID