パスカルが『プロヴァンシアル』において駆使した論駁と説得の論理は、それに先立つ科学論争の経験から多くの成果を学び、取り入れていた。拙稿(2008)では、以上の事実を、初期『プロヴァンシアル』におけるアルノー弁護の手紙を中心に、「事実問題」における感覚の役割の重要性および定義論という2つの観点から検証した。これにより、初期の論争が何よりも「言葉をめぐる争い」、「言語使用のモラルを問う争い」という性格を強くもつことが明らかになった。論点がイエズス会の道徳批判に移ってからも、同じ性格は依然として顕著に認められる。したがって、論争中期においても、パスカルが依拠する方法には、基本的に初期の立場を踏襲する点が多く見られるであろう。本編ではこの点について検討してみる。