本稿では,著者の所属する大学で開講された多読クラスの概要を紹介するとともに,その授業の履修者107 名の読書記録から,彼らの選書傾向,本の理解度,面白さの評価を報告する。履修者は授業が進むにつれ,段階的読み物から日本語母語話者用の読み物を読む割合が増えていった。また,理解度については,段階別読み物の理解度が高く,日本語母語話者向けの本の中では絵本の理解度が高かった。さらに,面白さについては,漫画の評価が最も高かった。データからはまた,日本語力の低い学習者には母語話者向けの本は適切な多読教材とは言い難いこと,今後日本語学習者のための多読教材を質量両面での充実する必要性があることも示唆された。