本研究は,日中のシティズンシップ教育を,社会のグローバル化への対応を視点として比
較・分析することによって,両国のシティズンシップ教育の特質を明らかにしようとするも
のである。その際,日本の場合には,現行の学習指導要領と中学校社会科公民的分野の教科
書を手がかりとし,中国の場合には,現行の2011 年版の『思想品徳課程標準』と教科書『思
想品徳』を手がかりとする。分析の結果,以下の二点が明らかになった。1)日本のシティ
ズンシップ教育では,政治や経済に関する知識の習得が目指されているのに対して,中国で
は中華民族としての自己認識が最終的な目標となっている。2)日本では,グローバルなシ
ティズンシップが国民育成の基盤のうえに,その発展形として位置づけられているのに対し
て,中国では,グローバルなシティズンシップ育成の中核に,中華民族としての自覚や態度
の育成が位置づけられている。