本研究では,10 名の読みや書きなどの学習面に困難を抱える発達障害をともなう子ども
にWechsler式知能検査およびRey-Osterrieth複雑図形検査(ROCF)を実施し,認知特性の
実態把握の過程におけるROCFの有用性を検討した。ROCFの記録には被検者の描画過程
をデータ化してパソコンに取り込むことのできるタッチペン (Inkling™) を用い,成績評価
には,描画の質的評価も含むBoston Qualitative Scoring System (BQSS) を用いた。
Wechsler式知能検査における知覚統合や知覚推理の下位検査の得点が良好であっても,
ROCFにおいて構成力や描画過程に困難が少なからず認められ,これらは学習面における困
難の背景にある病態を反映したものと考えられた。また,本検査成績を検討する上で,
BQSSの概要得点の1 つである組織構成,概要得点に含まれていないクラスター要素や細部
要素の配置の評価の重要性についても論じた。
Rey-Osterrieth複雑図形検査(ROCF)
Boston Qualitative Scoring System (BQSS)
Inkling™
神経心理学的検査
発達障害