Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

人工授精に於けるHyaluronidaseに関する研究 (3).牡牛精液に於けるHyaluronidaseの分布.及び添加Hyaluronidase製剤の精子による吸着

和田 宏 岡山大学
湯原 正高 岡山大学
抄録
(1).精液中に於けるH-aseの分布及び添加H-ase製剤の精子により吸着される量を検討する為に此の研究を行つた.此の実験の為に3頭の牡牛(その中1頭は黒毛和種,他の2頭はホルスタイン種)から人工膣法により10例の精液を得た.H-aseの測定は前報に述べたと同様にMc Cleanの方法を僅かに修飾した粘度法によつた. (2).この目的の為に採取後5時間,室温に保つた同じ精液試料につき次の様な3種の測定を行つた,そしてそれに適する様に精液を調整した.精液H-aseの測定: 均質化や,その他の処理を加えない精液を蒸溜水で稀釈して H-ase量を測定した.此の酵素力価を精液H-aseによるものとした.精漿H-aseの測定: 精液の完全な遠心分離後,精漿を得て,その酵素力価を測定した.此の酵素は精子から精漿中に遊離したものと考えられるが,吾々は之を精漿H-aseと称した.精子H-aseの測定: 精液0.2cc.または0.5cc.に蒸溜水10cc.を加え遠心分離後上清を傾斜した.此の洗滌を4回反復した.最後に沈澱(精子塊)に10cc.の卵黄乳濁液(蒸溜水8.5cc.:新鮮卵黄1.5cc.を加え,それを1分間18,000回転のホモゲナイザーで均質化した.上記の如くしてつくられた均質物のH-aseを測定した.精子中に残つているH-aseが測定されたものでこれを精子H-aseと称した. (3).これらの測定成績を第1表に示し,それから計算された結果を第2表に示した.精子一億あたりの精子H-aseの量は精液H-aseと精漿H-aseの差よりも大きく,概して精液H-aseそのものよりも大きい.従つて精子H-aseの一部は精液H-aseの測定に於いてその酵素反応にあづかつていないことになる.吾々はこれを潜在的(または内在的)精子H-aseと称した.そして精子H-aseの中で酵素反応に参加する他の部分を活性(または表在性)精子H-aseと称した.一般的に射精後5時間の精液に於いて潜在的酵素の量は活性酵素の量の略1.5倍であつた. (4).H-ase製剤(持田製薬の睾丸性H-ase製剤であるSpraseを使用した)を精液1ccに対し60,000 v. r. n.または120,000 v. r. u.添加した.添加後5時間以後に於いて精子 H-aseの酵素力価を測定した.対照区と比較するとき前者の量の添加では精子H-aseの力価は殆んど増加しないが,後者の量では僅かに増加する.精子1億に対する用量の点からするならば高い用量では大きな吸收を結果する.精子による吸收がみられるH-ase製剤の用量は精子の運動性に対し無害の範囲を超えている様に思われる.精子の運動性を減んずることなしに精子H-aseの量を増すことは困難と思われる。
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029