Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

人工不妊昆虫の生態に関する研究 IV.γ線処理ハスモンヨトウの性行動

清久 正夫 岡山大学
佃 律子 岡山大学
和田 脩 広島市・和田造園
抄録
137Csの放射線を蛹に照射したハスモンヨトウの雄蛾は3~5匹の雌へ次々と交尾し,その卵を孵化させなかった. 放射線を照射した雄と交尾した雌の産卵曲線は,正常雄と交尾した雌のそれとかなり異なり,産卵開始日が2日,最盛日が4日おくれた. 正常雄と交尾した雄を2日後にγ線を照射した雄と交尾させると,その内の大部分の雌は受精卵を毎目産んだ(一部では第2回交尾後に不受精卵を産む傾向を示したが). はじめγ線を照射した雄と交尾し,2日後に正常雄と交尾した雌では,おわりまで不受精卵を産むものと2回目交尾後に受精卵を産むものとがあった. 解剖によって生殖器の構造,生殖細胞の発育,交尾後の精莢や精子の行動を観察し,交尾から受精までの過程を吟味した. γ線を照射した雄と交尾をした雌が不受精卵を産む事実には2つの原因が関与することを知った. その1は精子がγ線によって不妊化(おそらく優性致死突然変異によるだろう)されること,今1つはすべてではないが雄の生殖系において射精管の一部が褐変したり,精莢が黒い奇型となって,精子の移行や放出がさまたげられ,交尾しても受精嚢内が無精子となることであった. γ線による上記のような雄生殖系の異常は相手の雌に不受精卵を生ませる原因となるが,2回以上交尾する習性をもつ昆虫では,このようなものに「Sterile Male Technique」を充分利用できない. 有効な適用のためには,生殖系へは異常をおこさせず,精子が不妊化されるようにγ線の線量と,それを照射するときの生殖細胞の発育時期を厳密に選ぶべきである。
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029