Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

アズキゾウムシ個体群の発生消長に及ぼす殺虫剤の影響

清久 正夫 岡山大学
佃 律子 岡山大学
抄録
本実験はアズキゾウムシCallosobruchus chinensisの実験個体群を用い,その発生消長が毎代のマラソン処理によってどんな変化を示すかを調べるとともにマラソン処理によって生き残り個体の生理的性質が変化する事実と何パーセントかの昆虫が殺されるために,生息密度が低下する結果次代の発生が多くなるという事実の両方面からその発生消長の原因を吟味した.1.マラソン1000倍液を用いて毎代処理すると,その後の世代において往々大きい発生の山が示され発生消長の巾が大きくなり,一般に発生水準が高められる.これに対し800倍処理の場合はその後の世代に上記現象が認められなくて,発生水準が一般に低い.2.前者において繁殖率(1雌当たり産卵数)は高く,卵より羽化までの間の生育率は高い.1000倍処理区の発生が高まる原因としてこれら繁殖率と生育率の高いことが考えられる.これに対し後者においては生育率は高いが繁殖率が明らかに低い.800倍処理区の発生の少ない原因としては特にこの繁殖率の低下が帰因するのであろう.なおマラソンに対する成虫の抵抗力は処理後7代目頃まで明らかでないが,それ以後において増加する.3.マラソン処理区の繁殖率を対照区の繁殖率-密度曲線へ.またそれの生育率を対照区の生育率-密度曲線へ適合させてその適合度を調べた結果,1000倍処理区では繁殖率は大体適合するが生育率が,また800倍処理区では両者がともに上記の曲線から明らかにはずれる.故にマラソン処理で密度が低下することによって生ずる個体群の自己調節現象のみが必らずしも次代の発生の根本原因であるとは言えないことがわかった.4.要するにマラソン処理によって発生が多くなるという原因は,その処理で生息密度が低下した結果昆虫の繁殖カが増加することと,そんな密度と関係なくマラソンによる昆虫の生理的変化に基づいて生育率が増大したことに帰因すると考えられ,発生が少ないという原因はもちろん密度とは関係なく生理的な繁殖率の低下に帰因すると思われる。
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029