Okayama Economic Review
Published by the Economic Association of Okayama University

Online ISSN 2433-4146
Print ISSN 0386-3069

フランス・スイス国境地域におけるInterreg プログラム

清水 耕一 岡山大学
石田 聡子 岡山大学
抄録
EU の共同体イニシアティブの1つであるInterreg プログラムの主な目的は,EU 内の国境を挟む地域間の市民レベルでの協力関係を発展させ,国境を越えた地域間統合を進めることであるが,Interregには国境を接するEU 内地域とEU 外地域との間の協力関係を促進するという目的も含まれている。本稿の対象はこの後者のケースに属すフランスとスイスの国境地域におけるInterreg プログラムである。スイス・フランス間のInterreg に関しては,バーゼル国境地域あるいはオーバーライン地方というフランス,ドイツ,スイスの3カ国が接する地域に関する伊東(2003)と八木・若森(2006)の研究が存在するが,本稿の対象とする地域に関する研究は存在しない。よって,本稿では,主にInterreg II の『事後評価報告書』(LRDP,2003a,2003b)とInterreg IIIA の『中間評価』(Evaluanda,2003)に依拠して,フランス・スイス間の越境地域間協力の実態を示すことにしたい。なお,本稿が対象とするケースはInterreg プログラムのうち,国境を挟む地域間の協力事業プログラムであり,これは 歴史的に1990~1993年のInterreg I,1994~1999年のInterreg IIA および2000~2006年のInterreg IIIA へと発展してきている。本稿の対象となる地域のInterreg プログラムは,オーバーライン地方と同様に,EU 内のフランスとEU 外のスイスとの間の越境地域間協力事業である。対象となる地域は,フランス側ではリヨン(Lyon)を中心都市にもつローヌ・アルプ(Rhône−Alps)地域(レジョン)の東北部と,ブザンソン(Besançon)を中心都市とするフロンシュ・コンテ(Franche−Comté)地域の東部であり,スイス側ではバーゼル(Basel)とジュネーヴ(Genève)を結ぶスイス西部のフランス語地域である。よっ て,この両地域には言語の障害は存在しない。また歴史的には,ジュネーヴはローヌ・アルプ・レジョンのオート・サヴォワ(Haute−Savoie)県との結びつきが強く,ジュネーヴとアンヌマス(Annemasse)は国境を挟んだ大都市圏を発展させている。さらに労働市場を見れば,両地域の経済状態を反映していると言えるが,フランス側からスイス側への越境通勤者が多く(約4万人),経済的結びつきも深いように見える。実際,ピット(2003)はフランスのトランスボーダー地域の分類において,ジュネーヴ地域をリール地域と並ぶ「国境を越えた隣接地域間に密接な結びつきをもつ地域」に分類していた。ただし,Interreg II の『事後評価報告書』(LRDP,2003a)によれば,フランス・スイス国境地帯の孤立状態は中程度であるとされており,孤立状態の最も低いオーバーライン地方やフランス・ベルギー国境地帯ほどの緊密な結びつきはない。しかも,フランス・スイス国境地帯 は北部と南部では地理的・歴史的特性が異なり,ジュネーヴを中心としたレマン地域では地域連携が比較的緊密であるのに対して,北部のジュラ山脈という自然の障害をもつジュラ地域ではレマン地域ほど結びつきは強くない。このような地域的特性を反映して,Interreg IIA プログラムでは,ジュ ラ・プログラムとローヌ・アルプ・プログラムが別々に実施されてきた。よって以下では,Interreg対象地域の地域的特性を説明(第2節)した後に,まずはInterreg IIA のジュラ・プログラムとローヌ・アルプ・プログラムを概観して問題点を示す(第3節)。次いで,両プログラムをサブプログラムに包摂したInterreg IIIA フランス・スイス・プログラムのガバナンス上の特徴と問題点を示すことにする(第4節)。
備考
本稿は,平成14年度∼平成17年度科学研究費補助金助成共同研究『国境を越える地域経済ガバナンス−EU 諸地域の先行例を中心とした研究』 (基盤研究(A),課題番号 14252007,研究代表者:若森章孝)に関連して行った研究の副産物である。
ISSN
03863069
NCID
AN00032897