Okayama Economic Review
Published by the Economic Association of Okayama University

Online ISSN 2433-4146
Print ISSN 0386-3069

ポストアナウンスメントドリフトとキャッシュフロー

中川 豊隆 岡山大学
抄録
ポストアナウンスメントドリフト(post−announcement drift)と呼ばれる現象がある。その大意は,決算発表後における株価の変化ないしは動向というほどの意味合いであるが,より厳密に言えば,決算発表後における決算発表で開示されたある財務情報と整合的な株価変化を意味する。例えば,利益額ないしは営業活動によるキャッシュフローの金額が前期よりも増加した(期待を上回った)という情報が公表された後しばらくの間生じる市場リターンを超える株価上昇や,前期よりも減少した(期待を下回った)場合に生じる株価下落といった現象のことである。なお,財務情報が発表される前の そのような株価動向は,プレアナウンスメントドリフト(pre−announcement drift)と呼ばれ,それらの二つをあわせてアナウンスメントドリフト(announcement drift)と呼ばれている。ポストアナウンスメントドリフト現象は,Ball and Brown(1968)がこの現象を裏付ける証拠を示して以来,実証的な会計学の領域で関心を集めてきた。 本稿では財務情報の有用性の視点から,この現象とキャッシュフロー情報の有用性との関係を探ってみたい。敷衍すれば,本稿の目的は,利益のポストアナウンスメントドリフト(post−earnings−announcement drift)に関するこれまでの研究を眺めた上で,キャッシュフローのポストアナウンスメントドリフト(post−cash−flows−announcement drift)を扱っているShivakumar(2006)の検証内容について考察しながら,ポストアナウンスメントドリフト現象とキャッシュフロー情報の有用性との関係について検討することである。ポストアナウンスメントドリフトについては,米国を中心にこれまでに多くの研究が展開されてきた。しかしながら,それらの先行研究は利益のポストアナウンスメントドリフトに関するものがほとんどである。これに対して,本稿ではキャッシュフローのポストアナウンスメントドリフトについても目を向けている。また,キャッシュフロー情報の有用性に関する研究は,これまで期待外キャッシュフロー変数とリターンとの関連性(情報内容)やキャッシュフローモデルの株価説明力(持分価値評価)という視点から行われることが多かったが,本稿では,キャッシュフロー情報の有用性とポストアナウンスメントドリフトとの関係について検討している。これらが本稿の意義である。本稿の構成は以下のとおりである。まず次節では,利益のポストアナウンスメントドリフトに関するこれまでの研究について,その現象の説明方法を交えながら説明する。次に,第3節では,キャッシュフローのポストアナウンスメントドリフトを検証する意義について,その前提となる考え方やキャッシュフロー情報の有用性との結びつきと関係づけて考察する。最後に,本稿の検討事項を整理し,今後の検討課題について考察することで結びとしたい。
備考
本稿には日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究 A)「財務情報の信頼性の保証に関する研究」(平成17年度∼19年研究代表者,友杉長正)における研究成果の一部が含まれている。
ISSN
03863069
NCID
AN00032897