Okayama Economic Review
Published by the Economic Association of Okayama University

Online ISSN 2433-4146
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アダム・スミスにおけるケインズ的問題―総需要不足と金融不安定性をめぐって―

新村 聡 岡山大学
抄録
一般にケインズの対極に位置すると考えられているアダム・スミスは,総需要不足と金融不安定性の問題をめぐって,現代の新古典派よりもむしろケインズやケインズ派に近い考え方をしていた。スミスはステュアートのように金融・財政政策を通じた総需要拡大を主張しなかったが,そのことはスミスが総需要の問題を考慮しなかったことを意味するわけではない。スミスは,重商主義政策の撤廃による自由で効率的な資本と労働の配分が,労働需要の増加と賃金の上昇を通じて大衆的消費需要を拡大し,さらに自由貿易政策による貿易の拡大も総需要を拡大すると考えていた。またスミスは,エア銀行の破綻処理の経験を通じて金融市場の不安定性を認識し,金融システムの安定化のためには銀行の自由競争だけでは不十分であって,政府による一定の法的規制と銀行の企業モラルの改革が必要であると考えるようになったのである。
備考
論説 (Article)
ISSN
0386-3069
NCID
AN00032897