人工血管により高度な機能をもたす目的で,ハイブリット化が今日進められるようになってきた。この背景について説明するとともに,我々の独自に行っているハイブリット型人工血管作成の方法およびその成果について報告する。その具体的方法としては以下の通りである。末梢静脈小片を勇刀にて細切したのち,約20ccの生理的食塩水に入れて静脈組織細切片浮遊液を作った。次に高有孔性人工血管の一端より吸引管を挿入し,これを作成した液に入れ,吸引によって組織片を外側から人工血管壁に絡ませた。次に新鮮な血液を注ぎ,組織片をさらに固着させた。成犬胸部下行大動脈へこのような処理をしたポリエステル布製人工血管を植え込んだところ,植え込み5日目に新生血管壁内部に無数の内皮細胞の増殖像がみられ,35日目の例では吻合部はもとより,人工血管の中央部ですら内皮細胞による完全な被覆を認めた。
以上のような方法で新生血管壁が容易に形成されることが判明したことより,今後,他の人工臓器分野でもハイブリット化が予測される。
人工血管 (Vascular graft)
ハイブリット (Hybrid)
新生内膜 (Neointima)
内皮細胞 (Endothelial cell)
自家移植 (Autologous transplantation)