Journal of Okayama Medical Association
Published by Okayama Medical Association

<Availability>
Full-text articles are available 3 years after publication.

呼吸器症状調査における自己記入方式と個別面接方式の比較 ―とくに,自己記入方式による地域評価の意義について―

坪田 信孝 岡山大学医学部公衆衛生学教室
Thumnail 92_125.pdf 613 KB
抄録
大気汚染の人体におよぼす影響に関して,疫学の分野では,持続性せき.たん有症率,慢性気管支炎有症率など呼吸器症状に関する指標が,影響の有無を検証するための指標として用いられてきた(1~10)).この呼吸器症状に関する指標は種々の質問を用いた住民調査によって得られるが,なかでもBMRCの質問票は標準的な質問票として広く用いられてきた.BMRCの質問票は面接方式を原則として開発されたものであるが,面接方式は自己記入方式に比較して人的・時間的コストが大きく,自己記入方式で実施された例もある(5, 7)).また,一方,我が国における大気汚染物質濃度は,特に硫黄酸化物を中心として低下しており,これに伴って有症率の低い地域の調査が重要となってきた.春日ら(9))は,このように有症率の低い地域の調査では,母有症率の推定範囲が有症率の大きさに比較して広い範囲となることを強調している.さらに,大気汚染以外の因子(性・年令・喫煙歴などの他,職業歴・既往歴など)が有症率の大きさを変動させる重要な因子となってくる.従って,春日ら(9))も述べているように,今後の調査に於ては,大きなサンプル・サイズが必要となってくると考えられる.そして,自己記入方式は,大きなサンプル・サイズを得る方法としての利点を有しているため,この方式の意義を論じることは重要と考えられる.従来より,自己記入方式で実施して得た有症率(質問によっては有訴率という表現の方がより適当と思われる場合があるが,以下ではこれらも含めて有症率という)の信頼性について,面接方式と比較した多くの報告がある(7~10)).表-1にこれらの報告の研究方法を示した.従来の報告の第一のタイプ(表-1・A)は,同一対象者に対し,面接と自己記入の2方式で調査を実施し,〔回答が一致するか?〕に注目した報告である(7,8)).米国のCHESS(l1))は常俊ら(8))の報告を一つの根拠として,自己記入方式を採用したと述べている.このタイプの報告は,解析方法からみると〔自己記入法が面接法と同一とみなし得るか否か〕を検証したものといえる.しかしながら,2つの方式からは本質的には異なる調査成績が得られるのであり,〔2つの方式を同一とみなし得なくても,2方式間に特定の関係が有症率の持定のrangeにわたって成立するならば,少なくともそのrange内では自己記入方式によっても有症率の比較が可能である〕といえる.従って,自己記入方式の意義を論じる上で,〔本質的に異なる調査方式をその同一性を証明しようとする解析〕によって論じることは,必須ではなく,むしろ,2つの方式で得た地区ごとの有症率の間に〔特定の関係が成立するか否か〕,そして〔その関係は密接であるか否か〕に注目した解析が必要と考えられる.例えば,自己記入方式の有症率が面接方式の有症率の2倍であったとしても(この場合,一致率は50% と低いが),この関係が一定のrange内で成立すれば,自己記入方式の信頼度は面接方式と同等といえる.最近,別のタイプの報告がなされた.春日ら(9))(表-1・B)は,異なる抽出法による2種の対象者に一方は面接方式で,他方は自己記入方式で調査した.彼らは,第一のタイプと同様に有症率の一致性に注目して,〔2種の対象者の有症率の差の検定〕を行ったが,さらに喫煙量別有症率の加令による変化,および年令階級別有症率の喫煙による変化を観察し,2方式の有症率の変化が同様の傾向を示したと述べた.これは,〔2方式の有症率の間に,低い有症率(若年層又は非喫煙者)から高い有症率(高年令層又は高度喫煙者)にわたって,密接な関係があるであろう〕と示唆するものである.久米ら(10))(表-1・C)は,2方式の有症者の一致状況をみると共に,岡山県の行なった面接方式による調査地区群と自己記入方式による調査地区群の中で久米らの調査した地区が,2方式共に,それぞれほぼ同様の相対的位置を示したと述べている.以上のように,第1のタイプ(表-1・A)は,もっぱら2方式の同一性に注目しているが,第2のタイプ(表-1・B・C)は,有症率のrangeを考慮している.第1のタイプでは,有症率のより高い地区,あるいはより低い地区においても,2方式の一致性が成立するか否かについては言及できない.これに対し,第2のタイプは有症率のrangeを考慮しているが,データの記述的観察を主としている.従って著者(表-1・D)は,岡上県の行なった19地区の成績を用いて比較的広い有症率のrangeにわたって,2方式の間に特定の関係があると言えるか否かまたその関係は密接であるか否かを回帰分析・相関分析によって検証することを試みた.
キーワード
自己記入方式
面接方式
BMRC標準化質問票
大気汚染影響
ISSN
0030-1558
NCID
AN00032489