電子線治療は,体表面またはその近傍に発生する悪性腫瘍の治療にしばしば用いられる治療法である。電子線はエネルギーに対応した飛程を持っており,飛程を越えると急激に線量は減少する。この性質は腫瘍に一定の線量を照射し,腫瘍後方に存在する決定臓器を保護することができるので,病巣を選択的
に治療するのに好都合である。しかし,照射野内に人体軌部組織より密度の違う物質が存在する場合,散乱,吸収の影響が大きく,電子線線量分布は乱れたものとなる。今回,人体内にある骨を想定してVolumeの違う骨Phantomを使
用して影響を調べたところ,骨幅によって骨後方および断端に線量の乱れが生じることがわかった。すなわち,骨の中央ではある程度後方に距離が離れると,線量は大きく減少する現象が見られた。また,横方向の線量分布は骨断端近くで一旦線量の減少が見られ,断端を離れると急激に増加する。したがって,実際の臨床において,Target Volume近くに骨が存在する場合は総線量の決定に際して注意が必要である。
電子線治療 (electron-beam therapy)
線量分布 (dose distribution)
不均質物質 (inhomogeneity)