本研究では,知的障害特別支援学校中学部に在籍する2名の生徒を対象として,ヒーロー(特別な興味の対象)の社会的好子としての効力とビデオヒーローモデリング(VHM)の効果との関連性について検討した。まず,担任教師への面接および質問紙調査によってそれぞれの生徒のヒーローを特定した。次に,任意の課題場面においてヒーローによる称賛を非随伴的に提示し,課題遂行率の変化を測定することでヒーローの社会的好子としての機能を確かめた。その後,日常生活場面から選定された標的行動に対してVHMを実施した。その結果,どちらの生徒についてもヒーローの社会的好子としての効力が確かめられたにもかかわらず,1名の生徒にはVHMによる行動改善が観察された一方で,もう1名の生徒の行動改善は限定的であった。ヒーローからの称賛が好子として機能するとしても,そのことが必ずしもVHMによる介入効果を予想するものではないことが示唆された。