Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

作物の塩害生理に関する研究 (第9報)麦類およびアスパラガスの耐塩性について

Shimose, Noboru
Abstract
大麦,小麦,アスパラガスを20,40,60meq/lの硫酸ナトリウムまたは塩化ナトリウムを含む培養液で,流動砂耕栽培し,その耐塩性について検討したが,次のような結果が得られた. 1.大麦とアスパラガスは耐塩性がきわめて強く,小麦も中程度以上の耐塩性を有することが認められた. ただし麦類とアスパラガスの耐塩性はかなり異なった要因にもとづくものと考えられた. 2.各作物ともに,培養液塩類濃度の増大に伴う全炭水化物含量に大きな変動は認められなかったが,大麦では塩化物区の穂における含量がやや少なく,小麦ではS-60区と塩化物区の穂における含量がやや低かった. 3.茎葉中の各種無機成分を分析した結果,大麦では塩類濃度の増大に伴ってナトリウムの吸収が著しく増加し,その結果カリウム,カルシウム,マグネシウム,マンガンなどが著しい吸収阻害をうけ,その含量からみて欠乏限界にまで達しているものと考えられた. またその吸収阻害程度は硫酸塩区の方が顕著であった. 全窒素も塩類濃度の増大に伴って低下したが,その程度は塩化物区に著しく現われた. 小麦では吸収量は全般に大麦ほど多くはなかったが,大麦ときわめてよく似た養分吸収状態を示すことが認められた. 一方,アスパラガスは前記2作物と全く異なった養分吸収の様相を呈することが明らかとなった. すなわち,塩類濃度が増大してもナトリウム,イオウおよび塩素の吸収はあまり増加しなかった. 従ってカリウム,カルシウム,マグネシウム,マンガンなどの吸収阻害は全く現われないか,現われてもきわめて軽微であった. すなわち,アスパラガスは外液中に多盤の塩類が存在しても,それらの吸収をある程度制御できる耐塩性作物であることを認めた. 4.大麦,小麦では塩類濃度の増大に伴って一般に全カチオン,全アニオン含量は増加し,しかも硫酸塩区ではその比率も増大し,塩化物区ではその値があまり変化がないか,またはやや低下する傾向が認められた. このようなカチオン吸収能の強い作物は,本実験における塩類濃度の範囲内では,この比率が大で,しかも塩類濃度の増大に伴ってその値も大きくなるものほど,一般に耐塩性が強い. 硫酸塩区でカリウム,カルシウムなどの吸収阻害が強く現われたにもかかわらず,塩化物区よりも耐塩性が強かったのは,この比率が塩化物区よりも大きかったことが一原因と考えられる. 大麦も小麦も附塩性はかなり強いが,大麦の方が塩基吸収能が大きく,しかもこの比率が大きかったので,小麦よりもさらに耐塩性が強いことを示している. アスパラガスは大麦,小麦とは全く異なった養分吸収能を持つことが認められた. この作物は塩類濃度が増大しても,ナトリウム,イオウ,塩素の吸収量があまり増加せず,そのためカリウム,カルシウムなどの吸収阻害もあまり強くは現われなかったので,全カチオンと全アニオンの比率にもあまり変動は現われなかった. ただし塩化物区の方がこの値がやや低かったが,このことは塩化物に対する耐性が多少弱いことを示すものと推察した. 5.以上のように,今回供試した3作物はいずれもかなり耐塩性は強かったが,これを2つのタイプに分けることができた. 1つは大麦,小麦のように,カチオン吸収能の強いもので,従来供試した作物ではイタリアンライグラスがこれに属する. 他の1つはアスパラガスのように,外液中の過剰塩類の吸収を強く制御できるタイプの作物で,ホウレン草がこれに属する. この2つのタイプのいずれがより強い耐塩性を有するかを判定することは難しいが,各種の実験を参考として,後者の方がより強いものと判断した。
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029