Scientific Reports of the Faculty of Agriculture, Okayama University
Published by the Faculty of Agriculture, Okayama University
ONLINE ISSN : 2186-7755

岡山県並びにその附近の野生薄荷に関する研究 (第1報)福山市附近で採集した一栄養系とその人為4倍体について

Udo, Seiroku
Ikeda, Nagamori
Abstract
〔57〕は福山地方で採集した野生薄荷の一栄養系である.本栄養系は先に東京大学原寛氏によつてMentha. arvensis×M. spicataの自然交雑に由来するM. gentilisの1変種,M. gentilis L. var. cardiaca BRIQ.と認定された.その外部形態は筆者等がその後育成した日本薄荷(M. arvensis L. var. piperascens MAL.)とオランダハツカ(M. spicata L. var. crispa BENTH.)との人工交雑によつて得たF1や日本薄荷とM. spicata L.との人工交雑によつて得たF1と酷似している.染色体数は2n=72で,前記F1と同じである.又共に完全不稔で種子を全く生ぜず,又精油の物理化学的性質や化学的成分も類似する.併し〔57〕が欧州から導入されたgentilisそのものとは考えがたい.恐らくそれとは独立に我が国においてM. arversis×M. spicataによつて生じたもので,欧州のgentilisに相当する自然交雑種であろう.而して採集地広島県福山地方に栽培される日本薄荷や,野生するオランダハツカ等が可能性のある両親と推定される.併し〔57〕は前記人工交雑種F1とちがつてPMCのMIに於て,4価,2価及び1価染色体を生じ複雑な染色体対合を示す.従つて単なるF1とは異なり,交雑の際又はその後に一部染色体の消失とか或は重複という様な複雑な過程を経て現在に至つたものと考えられる.〔57〕の人為4倍体〔C157〕は2n=144,形質は〔57〕に似ているが,倍数体の形態的,生理的諸特性を具えている.PMCのMIにおける染色体の対合は〔57〕より一層複雑である.一般の高次倍数体の場合と同様,多価接合は起り難いようで,8価染色体は現れず,4価染色体も期待程多くない.MIには4価染色体や2価染色体の外に約12の3価染色体とほぼ同数の1価染色体とが観察される.これらは4価を生ずべき相同染色体が,3価染色体と1価染色体とに分れたものと推定される.この状態で数的にも略安定した立場を示し,通常期待出来る4価と2価とにならない理由は分らないが,多価対合が出来難いという事実を示嗟するものではある.〔C157〕は放任受粉で若干の種子を生ずる.このような稔性の回復は複2倍体の特性であり,この点からも〔57〕の雑種性が証明せられる。
ISSN
0474-0254
NCID
AN00033029