ドイツ・ザクセン邦ミッテルシューレと東ドイツオーベルシューレとに焦点を当て,いわば学校教育法,学習指導要領などの比較考察から, ドイツにおける前期中等教育段階の物理教育の変遷を明らかにしてきた。ほぼ20年間の隔たりを有しているこの新旧物理は,通算呼称で第6~10学年の5年間になされることで変化はなかったが,週授業時間数合計で13から10時数へと大きく減少している。社会主義の優位性・正統性などの主張を念頭におかなくなり,選択分野や拘束性のない指示欄などを設け,生徒の興味関心・教師の自由裁量を考慮・許容することになり,力学と電気学分野の減少率・数が大きく,静力学,単純機械.静電場,半導体など古典的な内容や工学的な内容が扱われなくなった。イデオロギーの変化や科学技術の発展からの影響に加えて,第10学年に教科として特設されていた天文がなくなり,物理教育の概念・構造に変化をもたらしている。